当院の泌尿器科では、主に男性の前立腺がんと前立腺肥大症の治療に当っています。
前立腺とは……
前立腺は男性の膀胱の直下にあって、尿道を囲むように位置しています。 クルミのような形をした臓器で、精液の一部を作るはたらきをしています。
前立腺がんの特徴
前立腺に発生したがんは、前立腺がんと呼ばれています。前立腺がんは最近、著しく増加しており、過去30年で患者数・死亡者数とも約10倍になっています。これは日本人の食生活の欧米化(特に高たんぱく、高脂肪食の摂取)や平均寿命が大幅に伸びたこと、診療技術の進化によって前立腺がんが発見しやすくなったことも一因と考えられます。
前立腺がんは一般的に、高齢者の疾患と考えられています。患者さんの90%以上は60歳以上の方です。また、前立腺がんは進行が比較的緩やかなことが特徴とされていますが、最近は比較的若年の40~50歳代の方でも、まれに発病することがあります。しかも、若い人が発病した場合は、しばしば急速に進行することもあり、一概に前立腺がんを「穏やかながん」とは決め付けられません。
前立腺がんが進行すると、隣の臓器である膀胱や直腸まで広がるばかりでなく、リンパ節や骨、ときには肺や肝臓などの臓器に転移することがあります。
前立腺がんの診断
前立腺がんの診断には、まず腫瘍マーカーである血中PSA(前立腺特異抗原)の測定を行います。4.0ng/dl 以上を陽性と判定します。陽性の場合は針生検を行います。通常、短期間の入院を必要とします。検査の結果がん細胞が認められると、前立腺がんの診断が確定します。
前立腺がんの治療
治療は、病気の進行の程度や患者さんの年齢によって最適な方法が選択されます。
転移が無く、全身状態の良好な75歳以下の方では、一般に手術や放射線療法が選択されます。
それ以外の場合、手術や放射線治療と併用して、内分泌療法が行われます。内分泌療法というのは、前立腺がんの成長に必要な男性ホルモンが分泌されないようにする方法です。注射や内服薬が一般的ですが、精巣を摘出しても同じ効果が得られます。内分泌療法は副作用が少なく、有効率は90%以上とされています。しかし、何年か続けていくうちに効果が無くなることがあります。この現象を「がんのホルモン耐性化」といいます。ホルモン耐性化したがんに対しては、今のところ有効な治療方法はありません。
前立腺がん検診のすすめ
50歳以上の男性(家族歴を有する場合45歳以上)の方は「前立腺がんの検診」を受けられることをおすすめします。当院ではPSA検査・針生検・内分泌療法まで、前立腺がんに対応した治療を行っています。分からないことやご質問などがありましたらご遠慮なくご相談ください。
担当医師(常勤)
冨田 晋太郎(とみた しんたろう)
泌尿器科部長
担当医師(非常勤)
新美 文彩(にいみ あや)
東京大学付属病院
乾 政志(いぬい まさし)
東京女子医科大学 八千代医療センター 泌尿器科 教授