透析治療の専門組織 バスキュラー
アクセスセンター設立
当院のバスキュラーアクセスとは

当院では豊富な実績を誇る東葛地域最⼤の透析グループとしてバスキュラーアクセスセンターを設⽴し、「バスキュラーアクセス管理」を専⾨とする医療をスタッフを配置しています。年間⼿術実績も、新規透析導⼊患者数は約80件、バスキュラーアクセスとPTAは年間1,800件を超え、東葛地域の他の透析施設からの紹介にも対応しています。また、35床の療養病棟を設置し、通院が困難となった維持透析患者さんへの⼊院療養環境を提供することで、臨床⼯学部、看護部、地域連携室が⼀体となった治療に取り組んでいます。治療だけにとどまらず、スタッフの教育や様々な分野での研究が可能になり、透析治療の発展に寄与していきたいと考えています。

バスキュラーアクセスセンターの主な活動

管理カルテの作成
案内⽂書の作成と管理
情報発信と教育
調査・分析・検証
教育資料の作成
エコーの活⽤促進
質の⾼い医療の継続
千葉県東葛地区における
バスキュラーアクセス管理の専⾨組織 院⻑(バスキュラーセンター長) 内野 敬
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理事⻑ 東 仲宣

東葛クリニック病院は、松⼾を中⼼とした東葛エリアにおける透析治療のパイオニアとして50年にわたって活動してきました。透析に⼊られる 患者さんは年々⾼齢化し、透析に必要なバスキュラーアクセス(体から⾎液を取り出しまた戻す窓⼝)の作成や管理は⾮常に難しくなってきて います。わたしたち医療従事者に求められているのは、患者さんに対してシャントの作成やカテーテルの挿⼊などの医療⾏為を必要以上に⾏う ことなく、苦痛の少ない透析⽣活を送ってもらうことでQOL(⽣活の質)を浴していただくことです。そのための、「バスキュラーアクセスセ ンター」の設⽴が急務であると考えました。

⾼齢化する透析患者さん
患者さんの高齢化にともない、バスキュラーアクセスによる感染心不全、手指などの末梢虚血などが増えましたよね。
内野
はい。また、シャント肢の疼痛穿刺トラブルなども増加しています。これらは加齢による動脈硬化や皮膚の老化によるものも多く、できるだけ全身の負担を減らす治療体制が求められています。
このような患者さんの苦痛を少しでも解消するには、患者さんの治療履歴をデータベース化することが必要ですよね。同じようなケースが過去にあれば、そのときの症例と照合し、検証しながら、今より格段に患者さんごとに最適な医療を提供することが可能になります。できるだけ痛くない透析環境を実現してあげたいと思います。
内野
そうですね。痛いと来たくなくなるのは当然ですからね。そのためにも、電子カルテとは別に症例をデータベース化することが必須です。個人の時系列データとして考えた場合には「過去にどういう治療をしてきたのか」が瞬時にわかり、患者さんに共通する病態を横並びに見れば「どのようなアクセスを選択するのが最適か」ということが瞬時に判定できる。そんな強固でオリジナルなデータベースを作成したいです。
患者さんの年齢や病状、ライフスタイルに合わせたバスキュラーアクセスを提案するにあたっては、バスキュラーアクセスデータベースの構築が急務ですね。
院内の職種を横断したチーム体制
当院ではもともとチーム医療やプロジェクト医療など、院内の垣根を横断する診療体制を構築してきましたが、バスキュラーアクセスセンターにおいては、多職種による診療体制の充実とデーターベース化による分析を行う必要があります。現状での課題はありますか?
内野
バスキュラーアクセスのフォローアップは、エコー装置による定量的検査と、2Dによる形態的検査が主流になっています。現在はエコー検査とアクセス診察を別室にて行っていますが、リアルタイムの情報を共有するためには、診察室でエコー検査を行う形式にするのが良いと思われます。さらに、アクセス作製や再建を行うのは手術室なので、手術室でのデータ入力も重要な仕事となります。現在は外来診療室と検査室と手術室が別々ですが、今後は手術室でのデータ入力を可能にするとともに、次回の経過観察の予約もできるようなシステムにする必要があります。入力スタッフの確保なども課題ですね。
情報共有という観点では、症例に関する事例に簡単にアクセスできるようになると良いですよね。目で見て得られる情報は文字よりも強く印象に残りますから、動画配信サービスを活用した病病連携病診連携を推進する必要もあると思います。最適で最小の医療介入を目標にした病院と診療所の連携や、病院同士の病病連携を強化し、必要なプログラムを提供することで、この地域が全国のバスキュラーアクセス作成と術後管理の中心的な存在になるようにしていきたいと考えています。
地域の医療機関と連携した強固な体制
動静脈内シャントが安心して使用できるアクセスであることには変わりませんが、透析年齢の高齢化に伴い動静脈内シャントの割合が減少し、人工血管内シャント長期留置カテーテルが増加しています。こうした現状において、アクセスなどの管理も難しくなりますよね。
内野
そうですね。動脈硬化に起因する「スティール症候群」の発生など、従来のアクセストラブルと異なるトラブルの発生が多くなり、動脈硬化が原因でアクセス作製困難な症例が増加しています。動静脈内シャントの合併症は狭窄や閉塞が多く、透析の継続が困難になるものの、アクセスの合併症そのものが命にかかわることは比較的少ない状況でした。しかし、人工血管シャントの場合は、狭窄や閉塞などの合併症も発生しやすいですし、感染を発症した場合は感染拡大により生命に関わることがあります。そのほか、シャント瘤があります。瘤の多くは様子を観察することになりますが、出血が止まらない、破裂の危険性がある、感染の拡大があれば緊急手術になる場合はがあります。 また、長期留置カテーテルの場合は、脱血不良などの機械的合併症と同程度に感染の危険性があり、血流感染を発症した場合には生命にかかわることがあります。そのため医療機関が連携してアクセス管理を行う必要性が高まっています。
もともと当院では周辺の病院からの相談や、遠方のクリニックからの患者さんを紹介されることもありました。難しい症例でもバスキュラーアクセスの作製や修復を行っておりますが、将来的にはバスキュラーアクセスの「ホットライン開設」を目指していく必要がありそうです。
バスキュラーアクセスの未来
そうすると、我々の役目はこれまでの豊富な症例をデータベース化すること、そして情報の発信と連携、将来的には人材の育成が開発するべき課題ですね。
内野
大まかな方向性としてはそうなると思います。そのベースとなるのがバスキュラーアクセスセンターであり、今後一層の充実を目指していきたいと思います。また、他院からのバスキュラーアクセス作製のご依頼については、新規のアクセス作製という形で「バスキュラーアクセスセンター外来」を受診していただければと思います。バスキュラーアクセスの緊急時においても、アクセスセンターが対応窓口となって相談を受けます。アクセスのフォローアップに関しては、バスキュラーアクセスセンターから現状報告とともに注意点や、トラブルに対する対処法や将来のどのようなアクセスが可能であるかといった情報も発信していきます。
術後のフォローは切実な課題ですよね。症状が悪化するのは一瞬ですからね。バスキュラーアクセスは作成すれば終わりというわけにはいかないので、患者さんを取り巻く医療環境全体で連携しながら術後の管理を予測し、患者さんの反応から異変を察知し、適切な判断をすることが何より大切です。そのために必要な多くのプログラムを皆様方に提供し、有機的な連携を続けながら「東葛クリニック病院に送って良かった」と思ってもらえる組織を目指していきたいですね。医療勉強会の開催なども実施しながら、機能的で拡張性のあるバスキュラーアクセスセンターを目指していきましょう!
手術件数について

2019 2020 2021 2022 直近4年間平均
内シャント作成術(初回)
127
149
142
148
142
内シャント作成術(再建)
164
131
118
111
131
人工血管 内シャント作製術
53
47
60
63
56
動脈表在化術
27
70
51
43
48
カフ型カテーテル挿入術
113
123
112
144
123
PTA(造影透視下)
1012
750
768
627
789
PTA(エコーガイド下)
25
226
291
279
205
PTA合計
1037
976
1059
906
995
その他(血流抑制術・瘤切除・血管結紮など)
211
225
211
171
205
1月から12月集計
1726
1712
1738
1576
1688